保険の詰め物・被せ物

保険で使用される「歯科金属」について

保険適用の診療で使用される歯科金属は、通常「金銀パラジウム合金」と呼ばれる合金(いわゆる銀歯)が使用されています。金銀パラジウム合金は、金とは違い、安価で、健康保険が使えるというメリットがあります。しかし近年、この銀歯に関して、審美性の問題や、金属アレルギーの問題などから、自由診療でもセラミックの歯に取り替えたいといったご要望が増加傾向にあります。ここでは歯科金属についてご説明いたします。

金銀パラジウム合金

いわゆる銀歯に使用される、「金銀パラジウム合金」は、金、パラジウム、銀、銅、その他の金属からなる合金で、正式には「歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金」といいます。しかし、ヨーロッパなどの歯科医療先進国ではパラジウムは使用禁止になっている国もあります。理由としては、「金属アレルギー」があります。金属は、口腔内においてイオン化・溶出します。そして徐々に体内に取り込まれ、蓄積していきます。長い年月が経過してから金属アレルギーによる全身症状が発症するようなケースもあります。実際、パラジウムは「リンパ球幼若化テスト」という金属アレルギー検査では約半数の人に陽性反応が出ます。ドイツでは、保健省が歯科業界に対して「幼児及び妊婦に、銅を含有するパラジウム合金と水銀・銀アマルガム合金を使用しない」という勧告を行ないました。そして、パラジウムが体に与える悪影響を考慮してパラジウムフリー(パラジウムを含まない)金属を使うことを強く推奨しています。

金銀パラジウム合金(金パラ)

劣化した銀歯


歯科用水銀アマルガム

主に1970年代くらいに特に多く使用されていた充填物に「歯科用水銀アマルガム」があります。歯科用水銀アマルガムは、銀と錫(すず)の合金に銅や亜鉛を添加した粉末を水銀で練り込んだもので、むし歯を削った後に詰める材料として広く使用されていました。しかし、アマルガムは水銀を使用することから、以前より、健康に関する様々な問題が起きるのではないかといった議論も多くあり、実際、イギリス厚生省は、妊婦にアマルガムの詰め物をしないようにという警告を発しており、スウェーデンでは、政府が同様の発表をしています。

劣化したアマルガム

アマルガムが溶け出してできた歯茎できたの黒ずみ(メタルタトゥー)


差し歯の土台にも金属が使用されている?

いわゆる「差し歯」とは、被せ物をするときの治療の一種です。差し歯では、歯の根に「コア」と呼ばれる土台を差し込みます。金属性の土台のことを「メタルコア」といいます。金属ですので、それ自体は強度と耐久性をもっています。ただ、金属は強いかわりに、噛む力が加わった際に、メタルコアが差し込まれている歯の根の部分に、ダメージを与えてしまう場合があります、歯の根が割れてしまう場合もあります。また、金属がイオン化・溶出し、歯ぐきにしみこんで、歯茎が黒ずんでしまったり(メタルタトゥー)、金属アレルギーの原因になる場合もあります。

歯根破折

メタルコアによって生じたメタルタトゥ―


セラミックの歯にも金属が使われていることがある?

他院でセラミックの歯を入れたが、まさか金属が使われているとは思わなかった、という患者様もいらしゃいます。それは「メタルボンド」というものです。メタルボンドは表側はセラミックでも、裏打ちは金属でできています。そのため強度的に非常に強いという特徴があります。しかし、裏打ちに使われている金属の種類によっては、過酷な口腔内の環境によって、金属がイオン化・溶出する可能性があり、金属アレルギーを引き起こしたり、歯茎にメタルタトゥ―を作ってしまったりしてしまうこともあります。このようなことから、メタルボンドをやめて、一切金属を使用しないセラミックの歯による「メタルフリー治療」を希望される方が増加傾向にあります。 

メタルボンド

裏側は金属


保険で使用されるレジン(プラスチック)について

健康保険適用の治療では、歯科金属の他にプラスチック(レジン)も使用されます。被せ物の場合、審美的に特に前歯の場合には、金属の被せ物にしたくない方がほとんどですので、金属の被せ物に、見えるところだけプラスチックを貼り付けた「硬質レジン前装冠(こうしつれじんぜんそうかん)」が使用されます。保険適用となるため、費用面で安価に済むメリットがあります。しかし、プラスチックは吸水性があり、経年で劣化しやすく、黄ばんでくる特徴があります。特に前歯の場合、その経年による劣化・黄ばみでお悩みの方が少なくありません。このようなケースで、自由診療にはなりますが、経年で変化せず、自然な白さの美しさを再現可能な「セラミック」の歯を希望される方が増加傾向にあります。

硬質レジン前装冠

「硬質レジン前装冠」は、金属の被せ物に、表面にプラスチックを貼り付けたものです。プラスチックはその特性として「吸水性」があり、歯垢や歯石が付着しやすいことや、経年で劣化したり、黄色や茶褐色にく変色したり、割れや、歯肉の退縮などにより内側の金属が見えるようになってしまったり、金属がイオン化・溶出し、歯茎に黒いシミが沈着する場合もあります。 審美性の気になる方はセラミックへの交換をお勧めします。 

黄ばんでしまった硬質レジン前装冠

劣化し、割れてしまった硬質レジン前装冠


硬質レジンジャケット冠

「硬質レジンジャケット冠」は、全てがプラスチックのため、脆さ、欠けやすさといったデメリットの他、硬質レジン前装冠と同様、プラスチックはその特性として「吸水性」があり、歯垢や歯石が付着しやすいことや、経年で劣化したり、黄色や茶褐色にく変色したり、割れなどがおこりやすい特徴があります。 デメリットの部分が気になる方はセラミックへの交換をお勧めします。

劣化した硬質レジンジャケット冠

欠けてしまった硬質レジンジャケット冠


レジン充填(じゅうてん)

レジン充填(じゅうてん)とは、むし歯を削った後にレジンという歯科用プラスチックのペーストを詰め、その後硬化させる治療法です。健康保険が適用になることから、レジン治療は多く行われています。しかしデメリットとしては、時間が経つと変色して、見た目が悪くなることがある点。プラスチックという事もあり、強度が弱く、噛み合わせの力などが原因で、欠けたり割れたりすることがある点があげられます。

レジンを詰めた縁にすき間ができて黒くなっている。

劣化したレジンのすき間から菌が入り二次むし歯ができている。